第1回 西田賢司は探検昆虫学者である

パロメニア・イサベリナ(カメムシ目:ヨコバイ科)
Paromenia isabellina
長い後ろ脚で翅をショコショコとつくろう。派手な蛍光の警戒色でおそらく「ぼくはおいしくないですよ」とアピールしているが、天敵がいないわけでもない。いつでも飛べるように、ボディーケアは欠かせない。
体長:7mm 撮影地:サン・ラモン、コスタリカ

 なぜ探検昆虫学者なんですか? とよく聞かれる。

 多くの方々は自称しているように思っているかもしれない。でもそうではなく、ちゃんとそういう「職業」がある。昆虫学をやっている人にもあまり知られていないほどだけれど、英語でExploratory Entomologist(直訳すれば探検の昆虫学者)といい、生態系のバランスを保つために、特定の植物を食べる未知なる昆虫を探し、研究する。探検家ではなく、昆虫学者だ。でも探検昆虫学者という肩書きは、ぼくの研究活動のスタイルによく合っている。

 コスタリカには35万種ともいわれる多種多様な昆虫が生息している。そのほとんどに、まだ名前が付いていない。付いていても、生態が明らかにされていないものばかり。ぼくはジャングルや高山、樹上や洞窟など、さまざまな場所で主に昆虫たちの生き方を調べている。観察、採集、飼育、そしてそのデータを論文などにして発表する。毎日が発見の連続で、そんなところは探検的だ。次回から未知なる昆虫の生き方と、昆虫が中心となったぼく自身の生活を、写真やビデオなどを交えながら紹介していきます。お楽しみに。

クラドノータ・インフラトゥス(カメムシ目:ツノゼミ科)
Cladonota inflatus
「後ろに、なんか重そうな塊を乗せてて、よう飛べるわ!」 なんじゃこりゃ大賞に出場できることは間違いなし。最初の出会いはやっぱり「なんじゃこりゃ」。次に会ったとしても、「なんじゃこりゃ」だろう。シャッターを切った後、シューっと、どこかに飛んでいった。
体長:6mm 撮影地:サンタ・ロサ、コスタリカ
西田賢司

西田賢司(にしだ けんじ)

1972年、大阪府生まれ。小さいころから、生き物を相手にわが道を行く。中学卒業後、単身、米国の高校に入学。大学では小さい頃の生物に対する思いが高まり、生物学を専攻する。1998年からコスタリカ大学で蝶や蛾の生態を主に研究。昆虫を見つける目のよさに定評があり、東南アジアやオーストラリア、中南米での調査も依頼される。現在は、コスタリカ大学の調査員として、米国政府のハワイ州の外来侵入植物対策プロジェクトに参画する。第5回「モンベル・チャレンジ・アワード」受賞。
本人のホームページはhttp://www.kenjinishida.net/jp/indexjp.html
ナショナル ジオグラフィック日本版2010年2月号『人物ファイル』に掲載した。

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