第1話 実録!有人潜水艇による深海熱水調査の真実

その4  その瞬間、全身に稲妻が走った

前回まで: 2009年10月のインド洋。高井研を乗せた「しんかい6500」は、いよいよ水深2600mの海底に到着した。熱水噴出孔に近づくにつれ、深海の生き物の密度が濃くなってくる。そして、目の前に現れたのは・・・・・・

これが今回の主役、白いスケーリーフット。通称『シロスケ』。未知の生き物が発見される決定的瞬間を、発見者本人のレポートでお楽しみください
(新江ノ島水族館/JAMSTEC)

海底から10mぐらいのところで、観察窓に顔を押しつけて海底を探していたボクの目に、うっすら海底が見える。この瞬間がとても楽しい。

ボクは小さい頃、川や湖に水中メガネをつけて潜るのが、人生最大の楽しみだった。川や湖の底の景色は、普段目にする陸上の風景とはどこか違うように感じる。水を通して届く光の色調のせいなのか、水を伝わって耳に届く水の効果音のせいなのか、体に感じる水の感覚のせいなのか、そして、水の中で活き活きと動く魚や至近距離まで近づくと分かるいろんな種類の小動物や植物のせいなのか、とにかく心が躍動するとともにものすごく落ち着くあの水中の景色。

今見えているのは当時見ていた川や湖の底とは違う、深海の海底なんだけど、まったくボクの中では違和感なく、昔見た風景のように飛び込んでくる。

すとんと、水深2600mの海底に着底する。人の頭ほどある黒っぽい溶岩、玄武岩の「れき」の海底だ。簡単な報告を済ませると、時間がもったいないので早速、熱水活動域へと探査を進める。

今日は目的の熱水域まで200mぐらいしか離れていないところに降りたはず。実は前日に、潜水艇ではなくて、ケーブルに繋がったカメラを沈めて熱水の大体の位置とか粗い風景は分かっていた。本当は、そんな情報もない勝負探査が多いので、結構やみくもに(もちろんいろいろ作戦は立てるよ!)捜索し、かなりの確率で空振りし、徒労感に襲われることが多いけれど。

走り始めるとすぐに、岩の表面に白いイソギンチャクとシンカイミョウガガイとフジツボの仲間がペタペタと見え始めた。うん、熱水は近いな。普通の何もない海底では、こんなに大きな生物はたくさん見かけない。熱水が、エネルギーとなる物質を海底に運び、それを微生物が有機物に変換し、その微生物のおかげで栄養が豊富だからこそ、深海生物がたくさん生息できるのだ。

だから、熱水に近づくと生物の数、種類が飛躍的に増えてゆく。

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