特別番外編  「しんかい6500」、震源域に潜る

その3  震源の海底で、地震に遭う

前回まで:2011年8月5日。「しんかい6500」はいよいよ東日本大震災の震源域の海底に潜航しようとしていた。映画「日本沈没」のラストシーン(=地震の乱泥流に巻き込まれ海の藻屑に・・・)を思い描き、少しビビリつつも、高井研は「しんかい6500」の耐圧殻に乗り込んだ。

今回の「よこすか」&「しんかい6500」研究調査の乗船研究者たち。
(提供:高井研)

「しんかい6500」のコックピットでは、連載第1話で詳述したような潜航準備作業が進んでいく。今回の研究調査に際して、ボクがちょっとビビッていたように、「しんかい6500」の運航チームの中でも、映画「日本沈没」のラストシーンのような状況を想定してかなり真剣に議論していたらしい。そしてやや「昭和風味人情・仁義志向の強い」陸上勤務のJAMSTECの男衆たちは、「悲壮な決意の技術者達」ムードを盛り上げつつあった。

しかし、「しんかい6500」に乗り込んだパイロット達とボクには、そんな地震後の海底に挑む「気負い」や「悲壮感」は全くなかった。いつものように準備し、いつものように潜航調査を行うという感じだった。テンパリ具合は第1話で書いたインド洋熱水発見の方が遙かに強烈だった。

「しんかい6500」がチャプンと海水に浸かる。ボクは観察窓にへばりついて大好きな海の色彩を楽しむ。日本海溝の海水はインド洋や太平洋のど真ん中の海に比べると明らかに濁っている。汚いというのではなく一次生産が高いのだ。「プランクトン多めにしておきマシタ」という「のだめ」*の名セリフがぴったりだ。

* のだめ=マンガ「のだめカンタービレ」の主人公、野田恵の愛称

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