第6話  JAMSTECの拳―天帝編―

その2  「しんかい6500」、世界一から陥落

前回まで:ジェームズ・キャメロンのマリアナ海溝到達をはじめ、今年は深海挑戦の話題が目白押し。世界最深の座を奪われた「しんかい6500」とそれを擁するJAMSTECが、これから向かうべき道は? 高井さんが考察します。前回は、キャメロンの挑戦に科学調査の観点から疑問を投げかけたのでした。

「けっ、負け惜しみヤローが!」と言われれば、その通りです。JAMSTECがトリエステ号以来の有人潜水調査に成功していれば良かったのに・・・、と多くのJAMSTEC職員は心の中で思っているでしょう。

実際「しんかい11000(仮)」のブループリントがこれまで作られてこなかったわけではありません。このディープシー・チャレンジ成功のニュースの後、JAMSTECでは、プレジデントからしんかい11000(仮)の建造に向けた「あしたのためにその〔一〕」が高らかに何度も宣言されています。

確かに、水深11000mに潜航できる科学調査用有人潜水艇を造ることは、未踏技術への挑戦という面から重要であると言えます。ジェームズ・キャメロンもディープシー・チャレンジのビデオドキュメントの中で、その重要性を強調しています。また、そこにかける技術者達の想いは、同じ未踏領域に挑む人間として大いに共感・理解できます。

しかしプロのサイエンティストとして、客観的に冷徹に科学調査用有人潜水艇を造るプロジェクトを俯瞰してみた場合、「必要とされるお金、時間、労力に値するほどの画期的な科学価値」をすぐに想像することができないことに気付きます。

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