第6話  JAMSTECの拳―天帝編―

その3  世界一深く潜れる有人潜水艇は必要か?

前回まで:中国の有人潜水艇「蛟龍号」が水深7000メートルへの潜航を成し遂げ、“世界一深くまで調査できる潜水艇”の座を明け渡したJAMSTEC「しんかい6500」。じゃあ、次は「しんかい11000」を建造して世界一を取り返すのか? これまで30回以上「しんかい」に搭乗、調査してきた高井研さんは考えました。

じゃあワタクシ達JAMSTECは、再び世界一を取り返しに行くのか? ということです。

ワタクシは、有人潜水艇というのは、海洋科学調査における日本刀の太刀(たち)のようなものではないかと思うのです。

太刀は戦国時代までは武士の主流の武器でしたが、やがて戦の在り方が変化し、江戸時代にはその実用性が低下していました。それでも太刀は、武士の精神・武器の象徴として重宝されました。また、太刀を造る技術は他のすべての刀を造る技術の中の最高峰で、かつその基盤で在り続けたのではないでしょうか。

つまり、世界一深く潜れる有人潜水艇を持つということは、世界一の切れ味を誇る業物を持つことに例えられるのではないかと。その所有者には実用性だけでなく、最高を所有するという精神的な利益も与えられるでしょう。さらに最高の技術が磨かれ、伝承され、その営みは一つの文化を創り上げる可能性もあります。

それゆえに所有者が望むならば(国民やその代表である為政者が、コストをかけることを厭わないならば)、ワタクシは世界一深く潜れる性能を追求するべきだと、いやむしろ、「もっと熱くなれよ! 熱い血燃やしてけよ! 一番になるっていったよな? 世界一なるっつったよな! ぬるま湯なんかつかってんじゃねぇよ!」と100%修造化することを誓います。

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